しびれ

はじめに

しびれは、病院を受診するきっかけになる主な症状の一つです。日常生活の中では、しびれという言葉は、いろいろな意味で使われています。たとえば、「触っても感覚がにぶい」、「冷たさや熱さがが感じにくい」、「痛みを感じにくい」などの感覚の低下を意味することもあれば、「何もしなくてもジンジンする、ビリビリする」、「針でさされたような感じ」、「灼けつく様な感じ」などの異常感覚を意味することもあります。
また、 「手足に力が入りにくい」、「動きが悪い」などの運動麻痺や脱力をしびれとして訴えることもあります。
しびれを引き起こす原因も脳の病気、脊髄の病気、手足の末梢神経の病気などいろいろと考えられます。
しびれの原因によって治療法も違うため、しびれに対する正しい診断と治療が必要となります。

しびれの特徴

●部位別に見た代表的なしびれ(感覚麻痺)

単一神経の障害

障害された単一の末梢神経の症状が出現します。
上肢では正中神経麻痺(猿手),尺骨神経麻痺(鷲手),橈骨神経麻痺(下垂手)があり,
下肢では腓骨神経麻痺(垂れ足)が代表的です。

多発神経障害

感覚麻痺が左右対称性に手足にみられ、深部感覚(関節の位置や動きを司る)・表在感覚(触られる・冷たい・熱い・痛いなどの感覚)のいずれもが障害され、遠位部の運動麻痺や腱反射低下を伴うことがある.原因は糖尿病が代表的で、異常感覚が多くの例でみられ、しびれや灼熱感・足の違和感がみられる。
神経障害が高度になると、感覚は低下して糖尿病性壊疽に陥ることがあるので注意が必要である。

神経根の障害

神経根に支配される皮膚分節に一致する感覚麻痺が生じます。放散痛がみられることが多く、障害された神経根に対応する領域に強い痛みがみられます。

脊髄の障害

髄節以下の感覚麻痺が生じます。原因疾患としては脊髄梗塞・脊髄炎・多発性硬化症・腫瘍があります。脊髄の障害のされ方によって、半身または両側に感覚麻痺が出ることがあります。

脳の障害

脳幹や視床と言われる部位の障害によって、半身に感覚麻痺が起きます。慢性期では視床痛が有名で、痛みや感覚過敏・灼熱感などの異常感覚が自発的に継続してみられ、難治性の疼痛と言われています。

原因と疾患

しびれは、感覚の経路 (感覚受容器から末梢神経、脊髄、大脳へ至る感覚の伝導路)のいずれかに障害がおきると出現します。

  • 脳疾患

    しびれを起こす怖い病気として脳梗塞や脳出血などの脳血管障害があります。
    通常、脳血管障害によるしびれは、急に出現した片側性の症状であることが多いです。
    感覚障害に筋力低下を伴うことが多いのですが、感覚障害のみが症状であることもあります。
    口の周りと片側の手がしびれる場合なども脳血管障害の可能性があるので注意が必要です。

  • 脊髄疾患

    脊椎に異常があって、首 (頚椎) や腰 (腰椎) の神経を圧迫することによって生じるしびれは、慢性的なしびれで最も多い原因の一つです。この場合は、発症の日時が不明であったり、症状の変動があったり、ある一定の領域 (脊髄神経根であれば皮膚分節)に限局してしびれを認めます。

  • 末梢神経障害、膠原病、炎症疾患、内分泌疾患など

    手根管症候群や撓骨神経麻痺などによるもの、血管炎や膠原病などの炎症が関連するもの、ギラン・バレー症候群などの免疫が関連するもの、糖尿病やビタミン欠乏などの代謝性疾患に伴うものなど、末梢神経の障害だけでもしびれの原因は実に様々です。

脳血管障害

原因

脳血管障害を起こしやすい体質とは、たとえば生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満・喫煙・不整脈)を抱えている方です。
特に不整脈(心房細動)の場合、心臓で発生した血栓が脳に飛ぶ場合があります。その場合、片手だけなどの部分的なしびれや麻痺が起こる可能性があります。これらのことから、しびれはあらゆる危険性を加味して診断することが重要です。
また、5~10分程度で症状がおさまった場合でも、一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる脳梗塞の前兆とも言われています。
この一過性脳虚血発作を起こした場合は、かなり高い確率で脳梗塞へと移行しますので注意が必要です。

症状と特徴

脳梗塞の症状のひとつであるしびれは、正座した後起こるしびれとは少し異なります。
脳梗塞の場合は、急に激しくビリビリしびれるのではなく、徐々にうっすらと感覚の麻痺やしびれが起こります。
手に薄い手袋をはめたような鈍い感覚と、じんわりとしたしびれが特徴であるとも言われています。
このような症状が顔面を含む片半身に出た場合や、手足を上手く動かせない運動障害などを伴っている場合は、脳梗塞をすでに発症していることが考えられます。
感覚障害に筋力低下を伴うことが多いのですが、感覚障害が唯一の症状であることもあります。口の周りと片側の手がしびれる場合なども脳血管障害の可能性があるので注意しましょう。

 

治療方法

脳の障害は、脳卒中の発症後、時間が経つほど大きくなります。障害が大きくなると、後遺症も重度となり、命の危険も高まります。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの病態により、治療方法は異なります。
脳梗塞では、症状が出てから4.5時間以内であれば血栓溶解療法という治療法があります。また、生じた部位によっては血管内治療(血栓回収療法)や局所血栓溶解療法などを施行する場合もあります。
脳出血やくも膜下出血では手術を行う場合もあります。
ただし、大きな脳梗塞や脳出血を起こした場合、リハビリテーションをしっかり行ったとしても手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残る場合もあります。

その他疾患

その他の発症の誘因
(1)手根管の内腔を狭める因子(屈筋腱の腱鞘炎,関節リウマチによる滑膜炎,人工透析患者のアミロイド沈着、骨折など)
(2)神経の脆弱性(遺伝性圧脆弱性ニューロパチー,糖尿病性神経障害など)
(3)全身性要因(妊娠,浮腫,甲状腺疾患,原発性アミロイドーシスなど)

手根管症候群

手根管というトンネル内に通っている正中神経が圧迫されることで手根管症候群は生じます。
多くは特発性(原因不明)で、はっきりとした原因はわかっていません。
女性に非常に多く,妊娠中,閉経後に発症するので女性ホルモンとの関連があると考えられています。
また、生まれつき手根管が狭くなっている方にも発症することがあります。

糖尿病性神経障害

糖尿病神経障害とは、糖尿病によって引き起こされる神経障害のことです。原因として、高血糖による神経細胞の変化、動脈硬化からくる神経細胞への血流不足が原因と考えられます。
感覚神経障害の症状は、主に足の先からあらわれます。足の裏がジンジンし、ものに触れた時の感覚が鈍くなる(画びょうやガラスの破片を踏んでも気が付かないなど)、足の裏に薄皮が1枚張っているような感覚が生じます。

閉塞性動脈硬化症(ASO)

閉塞性動脈硬化症は、主に足の血管の動脈硬化がすすみ、血管が細くなったり、つまったりして、充分な血流が保てなくなる病気です。そのため、歩行時に足のしびれ、痛み、冷たさを感じます。さらに進行すると、安静時にも症状が現れることがあります。50歳以上の男性が発症しやすく、糖尿病や高血圧、高脂血症や肥満、喫煙習慣などが危険因子となります。
動脈硬化検査(CABI)や血管の狭窄を確認するために、エコー検査が有効で、当院循環器内科で行っている検査です。

運動失調

小脳は運動機能を調整するはたらきを持っているので、出血によって障害されると、うまく運動することができなくなります。

  • 細かい運動ができない
  • 歩行時にふらつく
  • めまいがする
  • ろれつが回らない

また、小脳出血では手足が動かなくなるといった麻痺症状は出現しません。
手足の麻痺がないのにこれらの症状がある場合は、小脳出血などの病気を考えなければなりません。

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