てんかん

はじめに

てんかんとは、 「24時間以上経過して生じた少なくとも2回の非誘発(あるいは反射)発作が認められる場合 あるいは、1回の非誘発(あるいは反射)発作であっても、以降10年間にわたって高い発作再発リスクが存在すると予想されるような発作」と定義されています。
脳が一時的に過剰に興奮することで、意識消失やけいれんなどの“てんかん発作”を繰り返し引き起こす病気です。
原因や症状は人によって様々で、 100人に1人の割合で、乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発病する可能性があり神経疾患のなかではもっとも多く、決して珍しい病気ではありません。。

「てんかん発作」は、脳の一部の神経細胞が突然一時的に異常な電気活動を起こすことで生じますが、脳のどの部位で起こるかにより様々な「発作症状」を示します。
症状は基本的に一過性で、てんかん発作終了後は元通りの状態に回復することが特徴です。        

原因と特徴

発作の原因は2つあります。
①脳の損傷や異常がないのに発作を起こす原因が明らかでない「特発性てんかん」
②脳卒中や感染などが原因で発作を引き起こす「症候性てんかん」


原因と発作の種類を組み合わせて、てんかんの4つのタイプがあります。

●特発性部分てんかん : 脳に損傷や異常はなく、部分発作を起こすてんかん。
●特発性全般てんかん : 脳に損傷や異常はなく、全般発作を起こすてんかん。
●症候性部分てんかん : 脳の損傷や異常によって、部分発作を起こすてんかん。
●症候性全般てんかん : 脳の損傷や異常によって、全般発作を起こすてんかん。

発作の種類

発作症状の現れ方は非常に幅が広く、神経細胞の異常興奮が生じる部位や強さによって大きく異なります。

●焦点発作(部分発作)
電気的興奮が脳の一部分から始まる発作です。
3つに分かれ、症状も異なります。


  • 発作症状の現れ方は非常に幅が広く、神経細胞の異常興奮が生じる部位や強さによって大きく異なります。

    ●焦点発作(部分発作)
    電気的興奮が脳の一部分から始まる発作です。
    焦点発作では、意識がはっきりしているかどうかで「単純部分発作」と「複雑部分発作」に分かれます。

  • ① 単純部分発作(意識障害なし)

    意識がはっきりしているなかでおこる発作をいいます。
    意識がはっきりしているため、発作中、どんな症状があったか覚えています。
    手足や顔がつっぱる、ねじれる、ガクガクとけいれんする、光や色が見える、人の声が聞こえる、片側の手や足のしびれ、吐き気をもよおす等があります。

  • ② 複雑部分発作(意識障害あり) 

    意識が遠のくため、患者さんは発作中のことを覚えていません。
    発作は通常1~3分続きます。単純部分発作から続くこともあれば、突然複雑部分発作から始まることもあります。脳のどの部分が興奮するかにより、意識障害に伴ってどのような症状があらわれるか異なります。

    「側頭葉」から興奮がおこった場合、けいれんしなくても開眼したまま意識を失い動作が停止する、手足をもぞもぞ動かしたり口をもぐもぐさせたりするなど、見た目では分かりにくい意識消失発作を起こします。
    「前頭葉」から興奮がおこった場合、身体をバタバタさせたり、自転車をこぐような動きをします。
    「後頭葉」に発症した場合は視覚や視野の異常といった症状が現れるようになります。

  • ③ 二次性全般化発作 (強直間代発作も合わさる大発作)

    単純部分発作あるいは複雑部分発作から、電気的興奮が全体に広がって全身のけいれんにつながることをいいます。
    発作の後半は、全般発作の強直間代発作と似ています。

●全般発作

部分発作の発信源が脳の一部であるのに対し、全般発作では脳全体が興奮状態になり、意識を失います。
症状によって分類があります。


  • ●全体発作
    部分発作の発信源が脳の一部であるのに対し、全般発作では脳全体が興奮状態になり、意識を失います。
    発作の症状によって4つに分類されます。

  • ①強直間代発作

    もっともよく知られているてんかん発作です。前兆がなく突然、全身のけいれんをおこします。
    最初に叫び声やうめき声が出て、手足を硬く伸ばして全身が硬くなる状態が数秒~10数秒続きます(強直期)。
    その後に手足を一定のリズムでガクンガクンさせながらけいれんします(間代期)。
    発作中は口をくいしばるため、口の中や舌を噛んだり、呼吸停止がみられます。
    発作は1分ほどで治まりますが、そのあとは眠ったままになったり、意識がもうろうとしたりすることもあります。
    15~30分で意識は回復しますが、その後、頭痛、筋肉痛、嘔吐がみられる場合もあります。

  • ②欠神発作  

    突然、動作が止まったり、ボーっとしたり、話が途切れたり、反応がなくなるなどの症状がおこります。
    発作時間は5~20秒くらいと短いために周りの人にてんかん発作と気づかれないこともあります。
    主に小児期に発症し、成人期に発症することはまれです。

  • ③ ミオクロニー発作 

    突然、手足や全身がびくっとけいれんする発作です。
    単発でおこったり、連続しておこったりとさまざまです。
    寝起きによくおこります。

  • ④ 脱力発作

    突然、全身の力が入らなくなり、崩れ落ちるように倒れこんでしまいます。
    持続時間は1~2秒ほどのごく短い時間ですが、突然転倒するためけがをしやすく頭部を保護することが必要です。

検査・診断

身体所見

  • 発作が起きた状況、時間
  • 発作の持続時間
  • 意識は保たれていたかどうか
  • 歩きまわったり、舌をなめるような、普段はしない異常な行動があったかどうか
  • 震えは左右どちらから始まったか?
  • 突っ張った姿勢なのか、両手足ががくがくしていたのか?

脳波検査

てんかんの診断に必須の検査です。頭皮に電極を装着し、脳の神経細胞の電気的な活動を波形として記録します。
てんかん患者では、発作が生じていなくても脳波で異常な電気活動がみられることがあります。
一般的な脳波検査は暗く静かな室内で安静にした状態で行われ、てんかん発作を誘発するために光を点滅させる、過呼吸をさせて負荷をかけながら反応を評価する検査も多くの場合行います。


血液検査

てんかんと似たような症状は、一部の薬剤による影響・中毒や、低血糖や電解質の異常などによって引き起こされることもあるため、それらの病気を除外する目的で血液検査を行います。

画像検査

脳自体に腫瘍などてんかん発作を引き起こす病気などがないか調べるために、CTやMRIを用いた画像検査が行われます。一部の症例では、さらに詳しくてんかんの焦点を調べるのに、脳血流検査(SPECTなど)や脳の代謝をみるためのPET、深部のてんかん性異常を検出するための脳磁図(MEG)を行うこともあります。

脳磁図検査

脳から発生する磁波を測定します。脳磁図検査では脳波と同様に脳活動を観察できます。
脳波が一般的で繰り返し行える検査であるのに対して、脳磁図は手術適応を検討中の場合や脳波で診断が困難な場合に限って実施されます。

治療方法

治療法が基本的には抗てんかん薬による治療をメインにおこないます。
また、てんかんの種類によっては外科治療や迷走神経刺激療法などが適応になる場合があります。適応のあるてんかんであれば専門病院での治療が必要になります。

薬物治療

抗てんかん薬/薬物療法

抗てんかん薬は、脳の神経細胞の電気的な興奮をおさえたり、興奮が他の神経細胞に伝っていかないようにすることで発作の症状をおさえます。てんかん発作型、年齢、性別などを考慮して薬剤の選択します。選択された薬が適薬かどうかは、発作に対する効果と副作用の有無によって決まります。 まず1種類の薬による単薬療法おこないますが、1種類のみでは発作が抑制されないときには、2種類以上の薬をもちいる多薬療法をおこないます。

薬物治療にあたっては、①毎日規則正しく服用する、②生活リズムを整えて暴飲暴食・睡眠不足を避ける、③勝手に服薬を中断しない、ことが大切です。

外科治療

薬物療法が効かない難治性てんかんに対して、外科手術による治療を検討します。
ただし、すべてのてんかんに外科治療が可能であるわけではなく、発作の始まる部分がはっきりしている、部分てんかん(側頭葉てんかん等)で、その部分を切除しても障害が残らない場合、外科治療が可能です。
また、治療経過や年齢、発作の頻度、発作のタイプなどの要因も総合的に判断して治療を検討します。

迷走神経刺激療法

日本では2010年に保険承認された治療法です。発作が少しでも軽減することを目的とする緩和手術になります。
発作が50%以上減少する患者さんの率は約60%、発作消失は約7%、迷走神経刺激療法を行っても無効な場合が25%ほどといわれています。

食事療法

代表的なものに「ケトン食療法」があります。ミオクロニー発作や脱力発作などの難治性発作を抑制する効果のほか、発達や精神面の改善効果がみられることもあります。適応年齢は、ほとんどが5歳以下の子どもです。

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