排便障害(便秘、下痢、便失禁など)

排便障害とは、便の通過や保持、排泄機能など排便に関してさまざまな障害が起こります。
主に「便秘」、「下痢」、「便失禁(便が漏れてしまう)」のことを指します。
何日も便が出ないでお腹が張ってきたり、便意があるのに出せなかったり、頻回の下痢でトイレへ行く回数が
多くなったり、便やガスがもれて下着を汚してしまうなど日常生活に支障を来してしまいます。例えば、肛門手術や大腸がんの手術後、出産などによる肛門括約筋の障害で肛門の締まりが緩くなったり、
便を溜められなくなったりします。神経の障害によって排便の機能が低下することで便秘や便が漏れやすくなったり、痔核、痔瘻、直腸脱などの疾患によって排便機能になんらかの障害を引き起こすことがあります。
加齢、ストレスや運動不足、下剤の服用、食生活の乱れなどによって下痢や便秘などをきたして排便障害に繋がることがあります。

便秘

「便秘」の定義として、慢性便秘症のガイドラインで「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と提唱されています。
また、「便秘症」とは便秘による症状が現れ、検査や治療を必要とする状態で、その症状として排便回数が減って便を出し切ることができない(腹痛、腹部膨満感など)、便が硬くなって出せない (排便困難など)、便の排出障害によるもの (軟便でも出せない、過度の怒責が必要、残便感、頻回の排便など)などがあります。
「機能性便秘(腸管機能の異常によるもの)」と「器質性便秘(腸管の疾病によるもの)」の大きく2つに分けられます。
このうち機能性便秘は、さらに弛緩性便秘・痙攣性便秘・直腸性便秘の3つに分けられますが、日本人の便秘の多くは弛緩性便秘といわれています。

  • 器質性便秘(きしつせいべんぴ)
    器質的な原因(大腸がん、腸管の癒着、炎症性腸疾患、肛門疾患などによる腸管や肛門の狭窄)による通過障害がおこり、急な便秘、血便、便が細くなるなどの症状がでます。
  • 弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)
    腸の動き(蠕動運動)が低下することによっておこります。便の通過が遅くなり、水分が多く吸収されて硬い便になってしまいます。女性やご高齢の方、運動不足、妊婦や出産回数の多い方などにみられます。
  • 痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ)
    偏った食事や運動不足といった生活習慣の乱れや、精神的なストレスなどによって、自律神経が乱れて腸の働きが低下することでおこります。便の通過が停滞することで便の水分が吸収されすぎてしまい、コロコロした硬い便になって便秘になります。その際、腹部違和感や腹痛を伴います。(便秘型の過敏性腸症候群など)
    また、下剤の乱用などで腸が過剰に蠕動運動をすることでも腸管の痙攣がおこり、下痢と便秘を交互に繰り返すことがあります。
  • 直腸性便秘(ちょくちょうせいべんぴ)
    便が直腸に来ても便意を脳に伝える神経が鈍くなり便意を感じることができず、便が直腸に溜まってうまく出せなくなってしまいます。女性特有の直腸瘤という病気や排便を習慣的に我慢してしまう方、高齢者、寝たきりの方など便を排出する力が弱くなっている方、神経疾患、糖尿病などの疾患がある方にみられます。

治療方法

  • 病気が原因の便秘の治療
    食生活や生活習慣だけの改善では治すことができません。原因となる病気そのものを治す必要があります。例えば、大腸がんなどが原因となっている場合は、手術治療や抗がん剤治療など、腸の炎症が原因であれば炎症を抑える薬などで治療を行います。
  • 生活習慣が原因の便秘の治療
    偏った食生活や無理なダイエット、運動不足、便意を我慢する習慣があるなど原因と思われる生活習慣の改善が治療の第一になります。それでも改善しない場合は薬(緩下剤、下剤、漢方薬など)で便秘の治療を行います。
  • 薬が原因の便秘の治療
    薬の副作用によって便秘が起こります。まず便秘の原因となる薬剤の服用を中止もしくは薬剤の変更をします。ただ、中止や変更できない薬(麻薬系の鎮痛薬や鎮咳薬、パーキンソン病治療薬、抗がん剤、向精神薬など)もあるので、そのような場合は緩下剤や下剤などの薬を併用し、量を調整しながら排便コントロールをしていきます。

下痢

下痢とは水様の便が排泄される症状であり,排便回数にかかわらず,1日の水分含有量が200 ml以上である状態とされていますが、実際に便の重さを計ることはしないので、1日3回以上の水様便などがあれば下痢としてます。
また、持続期間が2週間以内なら急性、2 ~4週間なら持続性、4週間を超える場合は慢性の下痢症となります。
下痢はQOL(生活の質)を著しく低下させるだけでなく、下痢が重症化すると、高度の脱水から腎不全、電解質異常、循環不全など重篤な状態になることもあります。
原因も様々で、病態によって以下のように分類されています。

  • 浸透圧性下痢(しんとうあつせいげり)
    食べたものの浸透圧(水分を引き付ける力)が高いと腸の水分が吸収されなくなって水分の多い便、いわゆる下痢を引き起こします。原因として、下剤の乱用やアルコール摂取、人工甘味料など糖分の多いもの、牛乳などの乳製品(乳糖不耐症)などがあります。
  • 分泌性下痢(ぶんぴつせいげり)
    細菌、ウイルスなどの毒素によって腸の粘膜障害がおこったり、ホルモンの影響で腸液などの水分が過剰に分泌されて下痢を引き起こします。
  • 滲出性下痢(しんしゅつせいげり)
    腸に炎症があると、血液や粘液や細胞内の液体などが腸の中に滲み出して水分量が増えることで下痢が起こります。
    また、炎症があるため水分の吸収が低下することで下痢を助長してしまいます。炎症性腸疾患であるクローン病や潰瘍性大腸炎などが原因となります。
  • 腸管運動異常性下痢(ちょうかんうんどういじょうせいげり)
    大腸の蠕動運動が活発になることで便の通過時間が早くなり水分を十分吸収されないことで下痢を引き起こします。甲状腺機能亢進症、糖尿病などの病気やストレス(過敏性腸症候群)などが原因とされています。

下痢の治療は原因によって異なりますが、一般的に行われることの多い治療には以下のようなものがあります。

治療方法

  • 細菌・ウイルスによる病気が原因の下痢の治療
    治療の主体は腸の安静や脱水の補正などによる対症療法がメインです。細菌性の下痢で症状が強い場合は抗菌薬を使用します。ウイルス性の下痢は抗菌薬は効かないので整腸剤や点滴などで対応します。下痢止めは細菌やウイルスを留めてしまいますので市販薬などを使用する前に病院に相談してください。
  • 消化管の病気や基礎疾患が原因の下痢の治療
    炎症性腸疾患が原因の場合には炎症を抑える薬を、過敏性腸症候群などが原因の場合は生活習慣の改善や薬での補助をおこないます。その他の基礎疾患(甲状腺疾患や糖尿病など)に対しても疾患に対して最適な治療方法を選択します。  
  • 薬剤が原因の下痢の治療
    服用している薬剤を中止するか他の薬剤に変更します。(緩下剤、刺激性下剤、抗がん剤など)ただし自己判断で中止せずに処方された病院に相談してください。
  • 生活習慣、体質が原因の下痢の治療
    飲みすぎ、食べ過ぎといった食生活の改善、ストレスが過度にかかる方は息抜きする時間を意識して持ってみたり、誰かに話して他人の助けを得たりすることは下痢改善に有効です。それでも精神的に負担がかかるようであれば心療内科や精神科への相談も検討してみてください。
    また、乳製品、人工甘味料、アルコール、カフェインなどの摂取で下痢が起こる場合は控えるようにしてください。

便失禁

「無意識または自分の意志に反して肛門から便が漏れる症状」と定義されています。
便意はあるけどトイレまで我慢できずに便を漏らしてしまったり、便意はないけど気付かないうちに便が漏れてしまうなどの症状がみられます。
便失禁は一つの要因で発症することは少なく、複数の要因が関与していることが多いです。
肛門を締めている括約筋の障害だけではなく、便の貯留能や便の性状、神経学的機能に問題があると便失禁の原因に関わっています。
例えば、加齢、分娩後、脊髄障害、肛門や直腸の術後、括約筋機能不全、過敏性腸症候群、糖尿病など様々な原因があります。

  • 漏出性便失禁
    無意識のうちに便が漏れている状態です。肛門括約筋が何らかの原因で緩んだ状態となり便漏れが起こります。
    便失禁の多くが漏出性便失禁です。
  • 切迫性便失禁(せっぱくせいべんしっきん)
    便意があるけど、我慢できずに漏れてしまいます。肛門括約筋の機能低下、貯留能の低下、下痢、過敏性腸症候群などが原因となります。
  • 混合性便失禁
    漏出性と切迫性の両方がある状態です。
  • 溢流性便失禁(いつりゅうせいべんしっきん)
    直腸内に溜まった便塊によって肛門括約筋が弛緩してしまい便汁が漏れ出してしまう状態です。
  • 腹圧性便失禁(ふくあつせいべんしっきん)
    お腹に力が入った時に漏れてしまいます。肛門括約筋のゆるみや下痢などが原因となります。
  • 機能性便失禁(きのうせいべんしっきん)
    認知症や運動機能の低下で一人で排便ができないことで便が漏れてしまいます。

治療方法

  • 食事、生活、排便習慣の改善
    まず便の性状を整えることが重要です。カフェイン、アルコール、柑橘類、香辛料の多い物の摂取を控えるようにします。また、直腸の感覚が正常な方であれば便を我慢しないでトイレに行くこと、感覚が低下した人では便意がなくても時間を決めて排便を試みてみるなど排便習慣をつけるようにします。

  • 薬物療法
    原因に関わらず軟便や下痢状態にになっていることが多いので、腹部症状や排便困難などの便秘症状が出ない程度に薬を使って調整していきます。大腸の動きを抑えたり、便回数を減らしたり、便性状を硬くしたりしていきます。

  • 骨盤底筋訓練
    ケーゲル体操とも言われ、外肛門括約筋や肛門挙筋などの骨盤底筋を収縮(筋肉トレーニング)することで筋力を増強させることで便失禁を改善させます。

  • バイオフィードバック療法
    バイオフィードバックとは行動療法(リハビリテーション療法)の1つです。一般的には身体の動きを数字やグラフなどで確認し、望まれる動きや状態を覚える方法で、排便に関しては、骨盤底筋の収縮力増強、持続、直腸感覚の正常化を目的とします。骨盤底筋の収縮力を患者さん自身が視覚的に認識することで訓練を効果的に行うことができます。

  • 手術療法
    肛門括約筋の裂傷や断裂(肛門術後、分娩、交通外傷など)で便失禁症状がある方に、括約筋修復術や括約筋形成術などで損傷した括約筋を縫合することで括約筋機能を改善させる治療です。また、人工肛門造設術も便失禁の治療方法となりますが、高度便失禁に対しての最終手段となります。

  • 仙骨神経刺激療法(SNM)
    仙骨神経を電気刺激することで、排便障害や慢性骨盤痛などの骨盤底機能を改善させる方法です。
    2段階の手術が必要で、1回目の手術で臀部付近に電気刺激リードを留置して有効かどうかの判定をします。
    無効であれば電気リードを抜いて、有効な場合のみ2回目の手術で電気刺激装置を埋め込みます。

  • 順行性、逆行性腸管洗浄
    腸の中を温水で洗浄して便をなくすことで便失禁を防ぐ方法です。お尻から洗浄する方法を逆行性、手術で虫垂や盲腸などに小さな人工肛門を造り、そこから温水を注入する方法を順行性と言います。

肛門括約筋不全

肛門の内、外括約筋の機能が低下することで便の保持ができずに便失禁を起こします。
特発性と症候性(外傷性)便失禁とがあり、特発性便失禁とは加齢による筋力の低下、神経線維の萎縮などが原因で骨盤底機能が低下することで引き起こされます。
また、精神的ストレスが原因となることもあります。
症候性(外傷性)便失禁とは分娩外傷や直腸、肛門手術による括約筋損傷などの外傷性肛門括約筋不全が多いです。また、脊髄損傷や脳神経疾患なども原因となります。
このように何かしらの原因、誘因によって引き起こされます。

症状と特徴

  • 内肛門括約筋:自身で意識しないでもお尻を締めている筋肉
  • 外肛門括約筋:自身で意識してお尻を締められる筋肉


    内肛門括約筋の機能低下は自分では気付かないうちに便が漏れている状態です。
    外肛門括約筋の機能低下は我慢できないトイレに間に合わないで便が漏れてしまう状態です。
    加齢、肛門手術や出産(会陰切開、裂傷、吸引、鉗子分娩など)による括約筋の損傷、外傷、
    神経疾患、糖尿病、甲状腺疾患、薬物性、原因不明など様々な要因があげられます。

治療方法

外肛門括約筋は自分で動かせますので、一般の筋肉トレーニング同様肛門を締める練習(バイオフィードバック療法)や骨盤底筋体操(ケーゲル体操)などで機能を改善させます。
外傷などで括約筋断裂を認めるときは括約筋を縫い合わせる手術が有効な場合もあります。
筋肉や神経の異常などによる特発性の便失禁に対しては肛門にひも状の道具を使用し肛門を程よい大きさに縮めます。また、排便に関連した神経を電気刺激し、症状の改善を図る仙骨神経刺激療法(SNM)などもあります。
それでも改善しない場合は人工肛門を造設する場合もあります。

過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)とは、検査を行っても腸管に炎症や腫瘍などの器質的疾患を認めないのに下痢、便秘などの便通異常や腹痛、腹部膨満感などの症状が慢性あるいは再発性に持続するという機能性疾患です。原因としては身体的、精神的ストレスが大きく関与しています。
また、遺伝,食物アレルギー、神経伝達物質,腸内細菌なども関与していると言われています。

症状と特徴

腹痛が最近3か月のなかの1か月に少なくとも3日以上を占めて下記の2項目以上の特徴を示すとなっています。

 ①排便によって症状が改善する
 ②排便頻度の変化で始まる(頻回の排便、便秘で排便頻度が減る)
 ③便形状(外観)の変化で始まる(硬便、軟便、下痢便)

(少なくとも診断の6か月以上前に症状が出現して最近3か月以内に基準を満たす)

便通の状態によって便秘型(IBS-C)、下痢型(IBS-D)、便秘と下痢を繰り返す混合型(IBS-M)、
どれにも属さない分類不能型(IBS-U)に分類されます。
女性の方が腹痛を訴えやすく、便秘型IBSが多い、男性の方が下痢型IBSが多いと言われています。

こうした症状のほかに自律神経症状 (頭痛、頭重感、眩暈、動悸、易疲労、四肢の冷感など)や
精神症状(抑うつ感、 不安感、不眠、焦燥感)などの症状もみられることもあります。

思春期から壮年期に発症しやすく、20歳代から40歳代に多く見られます。

 

治療方針

原則として症状の消失と便通の正常化を治療の目標とします。
ストレスや生活習慣、食生活の乱れが症状の発症、増悪する原因となります。
まずは食生活や生活習慣などライフスタイルの改善(適切な食事内容、適度な運動、睡眠を良くとるなど)
することで心身ともにストレスを減らすように心がけます。
それでも良くならない方は、病態に合わせて薬による治療を行います。ただ、薬に頼りすぎてしまわないようにできるだけライフスタイルの改善による根本的な治療が大事です。

心と心の通った地域診療を

内科、外科、耳鼻科、整形外科、泌尿器科と診療科目を有し、
地域の皆様と共に疾病の早期発見・早期治療を目指してまいります

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